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2008年 個展に寄せて

 


                        新庄美重子 (聖心会修道女。聖心会本部勤務。在ローマ)

 はじめて江花道子さんのアトリエに入った時、幻想的なベネチアの夕暮れの中に引き入れられてしまった。そのときの感覚は記憶に新しい。ローマに在住して数年たったある日、友人に連れられてご主人の中田クリニックを訪れたのが江花さんとのご縁の始まりであった。爾来、親しくお話しする機会を得、アトリエにもたびたびいれていただいている。

 江花さんの絵の前に静かにたたずむと、音楽が聞こえてくる。人々の話し声も聞こえてくる。自分がその場面に引き込まれてしまうのだ。以前は、絵というものは遠くから干渉するものだと考えていたが、今は、絵は自分もその場面の中に入って全身で味わうものだとおもうようになった。 江花さんのアトリエは大小さまざまな作品であふれている。いづれも自然の美しさ、文化歴史の重層さ、人々の生きざまの豊かさが包括されて調和のうちに描き出されている。筆を持つ江花さんの篤い思いと祈りも伝わってくるのだ。それらの絵の前に立つと、祈りの場にいるように感じるのである。それは、祈りとは、私たちの生活のすべてを携え、人々の希望と苦しみを抱えて神の前に静かにとどまることだからではないかとおもう。

 個展においでになる方々もきっとそんな体験をされることと期待する次第である。

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